何が分からないのかを分かるというのは大切なことだ。

悩みをしっかりと引き受ける大人が中々見当たらない。浅瀬の波打ち際で遊びながら海について、あることないこと語るような人ばかりで、しかも正解することはまず無い。それは当然の事で、その問題についてせいぜい便座に座っている間くらいしか考えた事がないし何の努力も変哲もない日々の中で得た視点からしか言わないのだから、正解のしようがない。自分は悩んじゃいないくせにまるでその道を通って来たかの如く悩みに答える無責任さを褒めて欲しいような態度まで取ったかと思えば、期待通りの言葉を掛けてあげる親切な人までいたりすると本当にもううんざりしてしまいます。

宮崎正弘先生と小川榮太郎先生の対談本がハードカバーで発売されて、御二方がどのような化学反応を起こすかとても楽しみでしたが期待以上の相性の良さで、願わくば第二弾、第三弾、と続編を読んでみたい気持ちになると同時に、箱から出してはしまうばかりで挫折しっぱなしだった本居宣長の読了にやはり挑戦しなければと思ったり、随分と頁が綺麗なままの古事記日本書紀を今一度手に取ってみたりすると、並んでいる文字の難解さに眩暈がしてしまうのですが、それが良い。何故良いかと言うと、悩めるからです。困りたいのです。M気質とか言うことではなくて、そうやっていれば強くなる事が分かっているから楽しいのですし私はどちらかと言えばSです。宮崎先生と小川先生の対談本のタイトルは『保守の原点 ―「保守」が日本を救う(海竜社)』ですが、原点は何なのかと言う答えについて、はいコレですよと示してあるわけではないのですが、ここら辺を探すと必ず見つかりますよと言うヒントはたくさん散りばめられている。一冊でまるっと物事が分かるような便利さが無いというのは素晴らしいもので、分かってしまえば怠惰にさせるところを、分からなければそのもっと先へと読者を育てる事ができる。またそうやって原点へ導いてくれたり、思い出させてくれたり、情熱を取り戻してくれる本は読者個人の体験としての原点と言う役割も果たす。「保守」と言うものについての理解や親しみは人それぞれだと思いますが、どういった方にとっても味わい深く広い裾野を持った良著です。

この本の中で保守の油断について語られた部分があって、率直な反省と冷静な指摘として私も同感ではあるものの、ここは個人ブログですので(w)持論を述べさせて頂くと、左翼のほうも大概油断していたのではないかと思います。お互い様と言ったらなんだか馬鹿らしい話になってしまいますが、現在進行形のあらゆるトピックで左翼側の言っている事の浅さと言ったら目を覆うばかりですし、結局左翼と言えども日本で暮らして日本で飯を食って円建てで貯金しているわけですから、左翼の左翼としての存在意義が今一度問われるべきなのではないでしょうか。その点、保守には多少積み上げて来たものが、少しセピア色になりかかっているかも知れませんが、あるはずです。左翼にもあったはずです。が、忘れ去られ過ぎているように感じますし、逆に保守の側で勤勉だった左翼側の議論を素直に視てみようとする人は少なからずいるように感じます。

そうは言ってもやっぱりまだまだ油断し続けていると思わざるを得ず、私が一番毛嫌いしているのはGHQが悪かったの一点張りをし続ける人です。GHQが悪かったのは当たり前として、ではその前までの2605年間はどこへ行ったのですか。それよりもっと前に何か反省すべき点は無かったのですか、あったと思いますよ。一つだけではなく、あらゆる要素の粒が砂になって山となって山脈を作って来たその結果が今なのであって、外的要因ひとつで全てが崩れるような事は一般常識的に考えて起こりえないでしょう。歴史は全部続いていて今日の事は明日になれば歴史の一頁に収まってゆくのですから、そうやって一点だけを見つめて前へ進もうとしない事がどれほど日本人の歴史を衰退させる事か少しは考えてみて欲しい。私ひとりの人生が詰まらなくなるくらいなら構いませんが、無駄に主張したり賛同を得ようとしたり動き回れば一人切りの問題ではなくなって、同じような人々で寄り集まって同じ場所に留まって、老いていく。そんなの悲しいですよ。齢を取るのは同じ事なんですから、無駄な足掻きでも構わないから私はもっと脳味噌が千切れるぐらい考えて心臓が潰れるくらい感じるものに巡り合ってから老人になりたい。

書評らしい書評を書く力量が無くて申し訳ないばかりですが、今日はこのへんで。すめらぎいやさか。

 

保守の原点――「保守」が日本を救う

保守の原点――「保守」が日本を救う

 

 

http://instagram.com/p/zB484qtty4/

保守の原点--「保守」が日本を救う 宮崎正弘、小川榮太郎(海竜社) 。対談本を読了。両著者のファンですが、相性がここまで良いとは嬉しい驚き。再読、そしてあれこれ他にも読み直したくなる。